商品コード: ISBN978-4-7603-0356-4 C3020 \50000E

日本差別史関係資料集成 第10巻 近世資料篇 (5) 原文篇

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第10巻 日本差別史関係資料集成  近世資料篇(5) 原文篇
亨保撰要類集、明和撰要集、安永撰要類集、天明撰要類集、寛政享和撰要類集、南撰要類集、天保撰要類集、嘉永撰要類集

解 説

この論攷は『日本差別史関係資料集成十巻(原文篇)』及び『日本差別史関係資料集成十一巻(解読・解説・索引篇)』を解りやすく説明する目的で記された。このシリーズの目的のひとつとして、徳川期における平人の下層細民と賤民の実態、制度や政策、および彼らへの社会事業にかんする史料の提供にある。原史料は国立国会図書館が所蔵する旧幕引継書から法令や判例を除き、かつ撰要類集を主たる史料として、それらを主題別に解読し、それに原文、解説、索引を附するものである。
旧幕引継書については南和男『江戸の社会構造』(塙書房 一九六九)に詳しいので、ここでは概略に留めたい。江戸幕府の諸記録は幕府崩壊に際して多くが散逸したが、幸い、一部が上野帝国図書館に保管を委託され、現在は後身の国立国会図書館に所蔵しされている。南北江戸町奉行所の史料が大半であるが、評定所、寺社奉行、作事奉行等の史料も含まれている。その総数は五九五六冊、他に絵図等がある。これらは帝国図書館により再整理再製本されており、分冊された原本も少なくない。これらの史料の特徴のひとつとして、施策の決定過程が判明することであると言えよう。貴重な史料を例示すれば、天保撰要類集、市中取締類集、諸色調類集、諸問屋名前帳などをあげることができよう。これらは江戸の経済、社会、文化、風俗などの実態を知る上で一級の史料である。一方で、史料が膨大に過ぎるが故に研究の障碍になる場合も存在すると考えられる。一例として町会所一件がある。これは一二〇冊を超える。町会所は、日雇い人、奉公人らの貧窮病の救済に重要な働きをするが、史料の膨大さが研究の妨げになる憾みがあると思われる。
撰要類集については石井良助編『享保撰要類集』第一(弘文堂書房 一九四四)と前述の南に詳しい。撰要類集とは、多様な主題ごとに編纂され、その主題ごとの一件書類集であり、幕閣にとっての前例集、と一言で表すことができよう。
前述の平人の下層細民としては、このシリーズでは武家奉公人、町方奉公人、隠売女、料理店等抱女、遊女、桶樽職等。制度政策としては諸奉公人宿、日雇座、新吉原、養生所、養育所、人足寄場、佐州水替人足、無宿野非人狩込、幕末の町兵取建等を挙げたい。賤民については、穢多、非人、猿飼等であるが、史料上は両溜穢多非人、紙屑買などとして原本上、括られている。
江戸の下層細民や賤民に焦点を当てて、旧幕引継書や撰要類集を用いて社会構造や社会政策を論じた考察は乏しく、南前掲書や石井良助『江戸の賤民』(明石書店 二〇一二)など数える程に過ぎないため、今後の解明の余地を大きく残していると言えよう。一方、それらを用いて被差別部落史研究の観点からの纏まった史料集として、中尾健次『弾左衛門関係資料集』(解放出版社 一九九五 三冊)があるが、史料に欠落があるだけでなく、翻字された文章は当時の国語から大きく乖離していると考えられる。したがって、文意を理解し難いため、研究に供しにくいといえよう。
本巻は穢多、非人、溜、乞胸に焦点をあてた第一冊である。当時の文書編纂者の意識は細民、賤民、犯罪者(囚人)等の身分上の区別は必ずしも明瞭ではないと考えられる。本シリーズでは原史料上の区分を尊重し、それに従ったため、このような身分のモザイク的構成となった。ご理解いただ上で、このシリーズの他の巻をも参照していただきたい。なお『天明撰要類集』には欠落があるために解読は施さなかった。ただ、「原文篇」で取り上げてあるので参照されたい。また、異体字は極力、採用しなかった。本巻が以後、研究の深化の一助となれば幸いである。

二○一八年新春
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