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第11巻　因幡・伯耆・出雲・石見・安芸・備前・備中・備後
〈2001/平成13年6月刊行〉

◎阿部惟親『因幡志』
◎石田春律『石見八重葎』
◎吉田豊功等『福山志料』
◎森立之、森約之『福山植物志』
◎石丸定良『備陽記』
◎黒川道祐『芸備国郡志』
◎加藤景纉他『芸藩通志』
◎頼惟柔『芸藩通志』


第11巻の内容……序にかえて

　本巻は、因幡、石見、備前、備後、安芸の諸国の本草史料を採録した。因幡と伯耆両国にわたる優れた本草史料に、平田景順著の『因伯産物薬効録』 があるが、本書はすでに生駒義博、生駒義篤両氏の校訂で雄松堂書店から刊行されているので、割愛した。 なお、備後・安芸両国の村別の本草史料を次巻に採録する予定である。

一、安陪惟親　『因幡志』(一七九五)
国立公文書館内閣文庫、一七五:一○五
　因幡国鳥取藩の侍医安陪惟親の編集になる同地方の地誌。村別に産物が記載されているのでこれを拾録した。

二、石田春律　『石見八重葎』(一八一六)
国立公文書館内閣文庫、一七五:一二九
　石見国(島根県西部)那珂郡太田村在住の郷土史家石田春律が編集した同地方の地誌。村別に産物が記載されているのでこれを拾録した。

三、中川顕允　『石見外記』(一八二○)
　 国立公文書館内閣文庫、一七五:一三○
　石見国の地誌。顕允は石見浜田藩の儒官。物産については、各郡の記述の中に簡単な記載があり、また巻末に石見国全域についてのかなり詳細な記述があるので、これらを採録した。巻初の「年中節序」には月毎に各種の動植物の様子が描写されている。珍しい資料である。なお、「附言」の中に「物産の類はあらましに記し、他日の考へをまつのみ」とある。

四、石丸定良　『備陽記』(一七二一)
　 国立公文書館内閣文庫、一七五:一六一
　備前国の地誌、全三五巻。内第七巻の「名所」の内に「備前国より出る名物之事」として、加工品を含む産物(動植物)を列挙する。江戸中期の成立であり、この時期資料としては少ない例に属する。定良は岡山藩士。
　なお、巻末に、本書の記載の一部に、筆者は不明であるが、異議を唱えた文が書き込まれている。

五、和田正尹、和田一江 『備前国誌』(一七三九)
国立国会図書館　一二五:一一
　備前国の地誌、一部備中国を含む。各郡の記述の中に主な産物を挙げて、産地等簡単な注記を付す。この部分を採録した。正尹は岡山藩儒。享保・元文期の『備前国備中国之内領内産物帳』の編集の主査を勤めた。一江はその子。

六、森立之、森約之　『福山植物志草稿』(一八六九)
国立国会図書館　伊藤文庫、特七:二一一
　備後国福山地方の植物計八六○種を、原野部三七六種、山谷部二四九種、河海部三七種、園庭部一九八種に分けてを記載する。文字通り草稿で、訂正加筆が多いが、幕末の同地方の植物相を伝える資料として、採録した。なお、立之は医師で国学者、福山藩医、幕府医学館講師、維新後は文部省、大蔵省に勤務。医学、本草学等の著書が多い。約之はその子、医師で福山藩校の教官。

七、吉田豊功、菅茶山　『福山志料』(一八○九)
国立公文書館内閣文庫、一七五:一七二
　備後国福山地方の地誌。巻二七「土産」に、動植物一一五七種を記載する。穀物類三八種、菜蔬類一一二種、菓木類四四種、喬木類七八種、灌木類八一種、薬物類一三九種、園卉類一一七種、湿草類三○種、蔓物類一八種、海草類五種、竹類一三種、虫類六二種、魚類二○七種、水禽類六一種、山禽七五種、原禽類二二種、獣類二二種。若干のものに説明を付す。

八、頼惟柔、加藤景?等　『芸藩通史』(一八二五)
国立公文書館内閣文庫、一七五:一七一
　全一五九巻の大著。巻四に藩を通した物産を記載し、以下各府・郡の内にも産物を記載する。その部分を採録した。頼惟柔(杏坪)は広島藩士、漢学者、著書が多い。頼山陽は甥に当たる。加藤は同じく広島藩士、頼惟柔に師事、藩学教授。

九、黒川道祐 『芸備国郡志』(一六六三)
国立公文書館内閣文庫、一七五:一六七
　広島領の地誌で、安芸国と備後国に分けて記述する。その各々に「土産門」として産物を掲げる。各に産地と古典の記事などによる説明を付す。ただし漢文。本書は地方の産物(動植物)をまとめて記載するものとしては、最も早い例に属する。道祐は広島藩医でまた地誌家。編著書に地誌関係が多い。『雍州府志』(本集成第VIII巻所収)も同人の編集である。

　以上、貴重な資料の復刻刊行を快くご承諾くださった国立国会図書館ならびに国立公文書館に対しまして厚くお礼申し上げます。

二○○一年みどりの日
編者識あ