本資料の体裁及び内容
①江戸の周辺部の地図群を網羅した『御府内場末往還其外沿革図書』(全8巻…原書の16巻~22巻・15巻に相当。朱引線の外側の地域を指し、現在の豊島区、板橋区、台東区、渋谷区、練馬区、目黒区、北区、荒川区、品川区、港区及び新宿区の一部などに該当)は、全8リール。
②江戸の中央部の地図群を掲載した『御府内往還其外沿革図書』(全15巻…原書の1巻~15巻に相当。朱引線の内側の地域を指し、現在の千代田区、港区、文京区、中央区、新宿区の一部などに該当)は、全5リール。
本資料の成立
内容は、江戸市中の住宅・道路・橋梁・空閑地その他の沿革を、幕府の普請方において調査・編集した基本資料。1804(文化4)年、老中牧野忠精が普請奉行小長谷和泉守などに命じて着手させ、1808(文化8)年、経費節減政策のためいったん中止したが、1830(天保元)年、事業を再開し、1858(安政5)年に完成。御府内篇と御府内場末篇の二部構成。
本資料の特色
(1)幕末期の江戸市中の住宅・道路・橋梁・空閑地などの沿革及び沿革図を集大成。
(2)江戸時代の政治・経済・文化・地誌・学問を研究するための基本資料集成―基本資料としての江戸の御府内場末の地図群を網羅して集大成。
(3)丁寧でかつ精密な編纂方式を採用―沿革の記述、編年体方式で掲載された時代別の附図は、ともに詳細で精密を究める。切絵図の20倍の精度。【延寶年中(1673-1680)之形】
【寶永七寅年(1710)之形】
【正徳三巳年(1713)之形】
【享保三戌年(1718)之形】
【享保十巳年(1725)之形】
【享保十四酉年(1729)之形】
【寛延元辰年(1748)之形】
【當時(1858)之形】
と、最大8種類の地図で、約200年以上に及ぶ町の変遷を概観できるのが大きな特色。
(4)日本における地図製作史上の偉大な成果―空間を表現する地図を、時間的な変化を表現する道具として作製。
(5)さまざまな分野で活用できる資料集成―地図学のみならず、歴史学、文学などの分野でも活用が可能。