内容
◎産科論[日講紀聞](エルメレンス 著、高橋 正純 訳、1873)【MM-GY-OOGM-I-01】
◎産科宝函(ミード 著、杉田 玄端 訳、1873)【MM-GY-OOGM-I-02】
◎産科摘要(ハルツホールン 著、小林 義直 訳)【MM-GY-OOGM-I-03】
◎婦嬰新説和解(ホブソン 著、広瀬 元周 訓点)【MM-GY-OOGM-I-04】
◎朱子産婆論(ベルンハルト・シュルチェ 著、山崎 元脩 訳)【MM-GY-OOGM-II-01】
◎日本における婦人科的報告[A. WERNICH: Gynaekologische Mittheilungen aus Japan]
(ヴェルニッヒ 著、1876)【MM-GY-OOGM-III-01】
◎江戸における医学クリニックおよび外来クリニックの統計的報告[A. WERNICH: Statistischer Bericht in der Medicinischen Klinik und Poliklinik zu Yedo](ヴェルニッヒ 著、1878)【MM-GY-OOGM-III-02】
◎産科全書(フライエール 著、物部 誠一郎、1878)【MM-GY-OOGM-III-03】
◎産科要訣(スウェン 著、高橋 正純 訳、1879)【MM-GY-OOGM-III-04】
◎女科約説(ニイメル 著、渡邉 越 閲 石黒 忠悳 抄譯)【MM-GY-OOGM-III-05】
◎産科学(吉田 顯三 訳、1881・1884)【MM-GY-OOGM-III-06】
◎日本人の助産学[SCHEUBE: Ueber die Geburtshilfe der Japaner](ショイベ 著、1883)【MM-GY-OOGM-III-07】
◎昆氏産科学(石川 清忠・長谷川 泰 著、1884)【MM-GY-OOGM-IV-01】
◎朱氏産科学(シュロエデル 著、石黒 宇宙治・尾沢 主一・浦島 堅吉 訳、1885)【MM-GY-OOGM-IV-02】
◎朱氏産科学(シュロエデル 著、 佐伯理一郎 訳、1895)【MM-GY-OOGM-IV-03】
◎産科図譜(原田 貞吉 著、1885)【MM-GY-OOGM-IV-04】
◎産科攬要(ハーケ 著、下平 用彩・吾妻 慶治 訳、1888)【MM-GY-OOGM-V-01】
◎産科術要(レオポルド・ツワイフェル等 著、 相磯 慥 纂訳、1890)【MM-GY-OOGM-V-02】
◎日本産科学史の補説(緒方 正清 著、1891)【MM-GY-OOGM-V-03】
◎産科訓典(グリフィス 著、 瀬脇 寿雄 訳、 1891【MM-GY-OOGM-VI-01】
◎婦人科準縄(ジュルセン 著、 柴田 耕一 訳、1894)【MM-GY-OOGM-VI-02】
◎婦人科診断学(ファイト 著、緒方 正清・高橋 辰五郎 訳、1894)【MM-GY-OOGM-VI-03】
◎助産学(レオポルド・ツワイフェル 著、二川 鋭男・緒方 正清 訳、1898)【MM-GY-OOGM-VI-04】
◎産科精義 上・下(ルンゲ 著、榊 順次郎 訳、1898)【MM-GY-OOGM-VII-01】
◎維傑爾氏産科全書 ウインケル 著、遠藤 外三郎・高阪 駒三郎 1892-1893)【MM-GY-OOGM-VIII-01】
◎朱氏婦人病学[婦人科病学](シュロエデル 著、 下平 用彩・小川 勝陳 訳、1899)【MM-GY-OOGM-IX-01】
◎産科手術学(デーデルライン 著、新井 古芳 訳、1899)【MM-GY-OOGM-IX-02】
◎産科婦人科全書(シャウタ 著、新井 古芳 訳、1899)【MM-GY-OOGM-IX-03】
◎産科手術学(シャウタ 著、楠田 謙蔵 訳補、1899)【MM-GY-OOGM-X-01
◎婦人科診断学(ウインケル 著、楠田 謙蔵 訳、1899)【MM-GY-OOGM-X-02】
◎婦人科的免腐法及防腐法全書(レエライン 著、楠田 謙蔵、1899)【MM-GY-OOGM-X-03】
◎産科婦人科診断学(ゼルハイム 著、緒方 正清 訳、1910)【MM-GY-OOGM-XI-01】
◎産褥婦と初生児の看護法(ワルテル 著、緒方 正清・梅山 英俊 訳、1913)【MM-GY-OOGM-XI-02】
◎近世婦人科全書(キュストネル 著、竹中 鎰之助 訳、1906-1907)【MM-GY-OOGM-XII-01】
刊行にあたって
日本医史学会監事 石 原 力(故人)
最近、日本の経済大国化に伴い、その西洋文明の摂取吸収と、これを自家
薬籠中のものとして急速に発展させた事実が、内外から注目されるにいたった。
医学の領域でも、西洋医学の「受容」について、阿知波五郎博士のように、透徹した分析に基く、すぐれた業績がみられる。
明治以後、おびただしい西洋文物の輸入に対する先人達の努力は周知の通りであるが、すでに江戸時代から西洋医学書の翻訳は開始されており、これに取り組んだ先覚の労苦については、杉田玄白が『蘭学事始』に記している通りである。
元来「翻訳」というものは、巷間いわれるような、横書きのものを縦書きにするだけといった浅薄なものではない。それは「言葉」が担っている、わが国の文化と、外国の文化とが、翻訳者のなかで、折衝し、相克し、決着をみた成果なのである。このような過程の集積が、現在の発展の基礎をなしたことを思うとき、これを跡づけ、そこから幾多の示唆を汲みとることは、われわれの責務でなければならない。
以上の趣旨から、このたび江戸時代から明治時代にかけての産婦人科翻訳書をあつめて『西洋産婦人科翻訳書集成』を刊行することとなった。江戸時代、産婦人科については、わが国独特の賀川流産科が隆盛であったため、西洋産科の移入が、他の諸科に比較して少なかったといわれる。それでも、かなりの西洋産科書の翻訳が試みられており、この翻訳書によって一八五二(嘉永五)年、伊古田純道はわが国最初の開腹手術として帝王切開術を秩父の山奥で行い、成功したのである。今残るこれらの翻訳書は、古書店に出廻ることはほとんどなく、一部の図書館、文庫、個人の所蔵として若干のものがあるにすぎず、その閲覧や利用は容易でない。そこで写本も含め、これら稀覯書を、各方面の御好意と御協力を得て、複製し、広く江湖に送って、利用者の便に供したいと願うものである。
翻訳医書は当時におけるわが国医学の最高水準を示すものであり、また現代医学に連続する同じ系列に属する産婦人科書は、若い産婦人科医や他科医師にも、用語や学説の変遷を知る上からも有用と思われる。
西洋医学とは系列を異にする、わが国在来の産婦人科書については、『日本産科叢書』に主要なものが収められており、今日入手しがたいものも、容易に参照できる状況にある。『西洋産婦人科翻訳書集成』は、これと対をなし、今後長く斯界に稗益するであろうと期待するものである。