商品コード: ISBN4-7603-0201-8 C3321 \50000E

第4巻 民間治療(8)

販売価格:
50,000円    (税込:55,000円)
第4巻(民間治療8)
Volume Ⅳ Folk Cure(8)

〈1999/平成11年6月刊行〉[第4回配本]

◎濟民略方
◎醫法明鑑(曲直瀬 正紹 著)

〔全11巻〕《全巻完結》
The Collected Historical Materials in Yedo Era III
浅見 恵・安田 健 訳編
B5版・上製・布装・貼箱入

一 濟民略方(さいみんりゃくほう)[国立公文書館内閣文庫所蔵、一冊、一九五・二三]
四十七種類の主要な病気門に対応する処方約六百種類を網羅し、それぞれの処方の薬理作用及び製造方法を詳細に叙述。著者は不明。年記はない。目次構成は以下の通りである。[]の中の数字は、記載されている処方名の数を表している。

(一)中風門[十四種類]、(二)傷寒門[三十種類]、(三)中暑門[八種類]、(四)中湿門[四種類]、(五)霍乱門[七種類]、(六)内傷門[九種類]、(七)泄瀉門[十二種類]、(八)痢病門[九種類]、(九)瘧疾門[十六種類]、(十)翻胃門[十三種類]、(十一)氣門[八種類]、(十二)痰飮門[十三種類]、(十三)■嗽門[十六種類]、(十四)水腫門[二十四種類]、(十五)諸蟲門[五種類]、(十六)積聚門[九種類]、(十七)秘結門[十種類]、(十八)虚損門[二十二種類]、(十九)自汗門[十二種類]、(二十)眩暈門[六種類]、(二十一)頭痛門[十二種類]、(二十二)心痛門[十三種類]、(二十三)腰痛門[十七種類]、(二十四)痺證門[十種類]、(二十五)脚氣門[六種類]、(二十六)疝氣門[四種類]、(二十七)淋病門[八種類]、(二十八)溺濁門[八種類]、(二十九)消渇門[八種類]、(三十)黄疸門[九種類]、(三十一)癲癇門[十種類]、(三十二)血證門[二十三種類]、(三十三)脱肛門[五種類]、(三十四)痔漏門[十二種類]、(三十五)■逆門[六種類]、(三十六)眼目門[八種類]、(三十七)耳病門[五種類]、(三十八)鼻病門[三種類]、(三十九)口唇門[七種類]、(四十)牙歯門[八種類]、(四十一)咽喉門[七種類]、(四十二)折傷門[五種類]、(四十三)破傷風門[五種類]、(四十四)瘡瘍門[二十五種類]、(四十五)中毒門[八種類]、(四十六)婦人門[七十八種類]、(四十七)小児門[三十八種類]。

江戸時代の初期の寛永五〈一六二八〉年に刊行されていることを考えると、注目に値すべき資料と言えよう。
本集成では国立公文書館内閣文庫所蔵の写本を使用した。『国書総目録』『古典籍総合目録』(岩波書店)によれば、この写本及び版本は、内閣文庫の他では、以下の諸機関に所蔵されている。

(一)九州大学[版本、寛永五〈一六二八〉年刊行]
(二)杏雨書屋[版本、寛永五〈一六二八〉年刊行、杏三五六九]
(三)玉川大学[版本、寛永五〈一六二八〉年刊行]
(四)杏雨書屋乾々齋文庫[写本、年記はなし]。

二 醫法明鑑(いほうめいかん)[国立公文書館内閣文庫所蔵、四冊、一九五・一六四]
別名は、醫方明鑑(いほうめいかん)。著者は曲直瀬正紹である。曲直瀬家の系譜を辿ると、以下のようになる。
曲直瀬道三(正盛)―玄朔(正紹)[天文十八―寛永八(一五四九―一六三一)年]―玄鑑(親純)―親昌―玄淵(親俊)[寛永十三―天和三(一六三六―一六八六)年]。
この書は、道三の跡を継いだ玄朔(正紹)の著書で、寛永十八(一六四一)年に四冊で発行されている。『常山方』と同じく、処方を集大成したもので、当時知られていた主要な病気を分類して、それに対応する治療方法や服薬方法を解説したものである。この資料は、曲直瀬玄朔の独創的な見解を披瀝した治療書と言うよりも、父の曲直瀬道三の『啓迪集』に依拠し、主として『醫林集要』、虞搏『醫學正傳』などの書籍から処方を抜粋・整理したものである。引用文献名も略語で明記されている。「林」は『醫林集要』、「傳」は『醫學正傳』を示すのであろう。
本集成では内閣文庫所蔵の寛永十八(一六四一)年発行の四冊本を使用した。この文庫以外に、この資料の版本及び写本を所蔵している国内の図書館を列記してみよう。いずれも『国書総目録』『古典籍総合目録』(岩波書店)からの引用である。
*写本 (一)内閣文庫[第三巻のみ]、(二)慶応大学、(三)慶応大学医学部富士川文庫、
(四)杏雨書屋乾々齋文庫[自筆]。
*版本(寛永五[一六二八]年発行)(一)東北大学狩野文庫、(二)研医会図書館[第一巻及び第二巻のみ、二冊]、(三)慶応大学医学部富士川文庫。

*版本(寛永十三[一六三六]年発行)(一)慶応大学医学部富士川文庫、(二)研医会図書館[第一巻から第五巻まで、五冊]。

*版本(寛永年間発行)(一)天理図書館古義堂文庫、(二)旧彰考館。

*版本(慶安三[一六五○]年発行)(一)京都大学富士川文庫[第一巻から第四巻まで、三冊]。

*版本(慶安四[一六五一]年発行)(一)京都大学富士川文庫。

*版本(延宝三[一六七五]年発行)(一)東京大学[第二巻及び第四巻のみ、二冊]。

*版本(発行年不明)(一)京都大学富士川文庫、(二)九州大学、(三)東京大学鶚軒文庫、(四)大阪府立図書館石崎文庫、(五)広島市立浅野図書館小田文庫、(六)市立刈谷図書館。

ここで、曲直瀬玄朔が活躍した江戸時代の初期の医学の内実について総括してみよう。
徳川家康が政権を握り、江戸幕府を開いた慶長八(一六○三)年から、宝永七(一七一○)年までを江戸時代前期と定義する。この時代の医学は、中国より田代三喜などによりもたらされた李朱医学の全盛時代で、薬物の起源や鑑識、薬物の原材料地の探求などを主とするものではなく、実際の臨床治療に役立てることを主眼として、薬物の製造方法や効能のメカニズムなどを探求することに重点をおいたものであった。曲直瀬玄朔は、「幅広い視点をもって『内経』を校閲し、本草を常に考究する。診切は王氏の『脉経』を主とし、処方は張仲景を宗とする。用薬は李杲(李東垣)の方法を専門とし、なお潔古(張元素)をも参照する。病気の諸症状を弁治するためには、朱震亨(朱丹溪)を師とし、なお天民(虞搏)に従う。外感は張仲景に、内傷は李杲(東垣)に、熱病は劉完素に、雜病は朱震亨(朱丹溪)に、それぞれ則って治療することを心掛けるべきである」と、説いている。ここに彼の治療方法の真髄が、要領よくまとめられている。西洋医学の伝来が確認されていないこの十七世紀にあっては、当然ながら中国医学の影響力が大で、日本の風土や民俗に即した独創的な治療方法の確立は、時間を経てからのことである。いわゆる、漢方医学の記載的段階に相当する時代であったのであろう。だが、約一千四百項目にのぼる多くの処方が記載されていることを考えると、中国の古典的な医学書から採用された処方のほかに、初代の曲直瀬道三以来、曲直瀬家によって考案あるいは改良された数々の処方が混在していると考えるのが妥当であろう。ただ、編者の力量を考えて、この研究は後学の士に委ねられるべきであると考える次第である。これら中国伝来の古典的な処方と、日本において改良あるいは考案された処方の比較研究は、中国と日本の医療文化の相互の伝播作用を解き起こす重要な鍵になるであろう。現在の薬の効果のみを論ずる平面的な研究ではなく、処方の背後に見られる何物かを読み取る立体的な研究へと開かれる道があることを確信している。歴史学、論理学、薬学、民俗学などの蓄積を活用して、今後の総体的な研究が待たれる次第である。
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解 説

一 濟民略方(さいみんりゃくほう)[国立公文書館内閣文庫所蔵、一冊、一九五・二三]
四十七種類の主要な病気門に対応する処方約六百種類を網羅し、それぞれの処方の薬理作用及び製造方法を詳細に叙述。著者は不明。年記はない。目次構成は以下の通りである。[]の中の数字は、記載されている処方名の数を表している。

(一)中風門[十四種類]、(二)傷寒門[三十種類]、(三)中暑門[八種類]、(四)中湿門[四種類]、(五)霍乱門[七種類]、(六)内傷門[九種類]、(七)泄瀉門[十二種類]、(八)痢病門[九種類]、(九)瘧疾門[十六種類]、(十)翻胃門[十三種類]、(十一)氣門[八種類]、(十二)痰飮門[十三種類]、(十三)■嗽門[十六種類]、(十四)水腫門[二十四種類]、(十五)諸蟲門[五種類]、(十六)積聚門[九種類]、(十七)秘結門[十種類]、(十八)虚損門[二十二種類]、(十九)自汗門[十二種類]、(二十)眩暈門[六種類]、(二十一)頭痛門[十二種類]、(二十二)心痛門[十三種類]、(二十三)腰痛門[十七種類]、(二十四)痺證門[十種類]、(二十五)脚氣門[六種類]、(二十六)疝氣門[四種類]、(二十七)淋病門[八種類]、(二十八)溺濁門[八種類]、(二十九)消渇門[八種類]、(三十)黄疸門[九種類]、(三十一)癲癇門[十種類]、(三十二)血證門[二十三種類]、(三十三)脱肛門[五種類]、(三十四)痔漏門[十二種類]、(三十五)■逆門[六種類]、(三十六)眼目門[八種類]、(三十七)耳病門[五種類]、(三十八)鼻病門[三種類]、(三十九)口唇門[七種類]、(四十)牙歯門[八種類]、(四十一)咽喉門[七種類]、(四十二)折傷門[五種類]、(四十三)破傷風門[五種類]、(四十四)瘡瘍門[二十五種類]、(四十五)中毒門[八種類]、(四十六)婦人門[七十八種類]、(四十七)小児門[三十八種類]。

江戸時代の初期の寛永五〈一六二八〉年に刊行されていることを考えると、注目に値すべき資料と言えよう。
本集成では国立公文書館内閣文庫所蔵の写本を使用した。『国書総目録』『古典籍総合目録』(岩波書店)によれば、この写本及び版本は、内閣文庫の他では、以下の諸機関に所蔵されている。

(一)九州大学[版本、寛永五〈一六二八〉年刊行]
(二)杏雨書屋[版本、寛永五〈一六二八〉年刊行、杏三五六九]
(三)玉川大学[版本、寛永五〈一六二八〉年刊行]
(四)杏雨書屋乾々齋文庫[写本、年記はなし]。

二 醫法明鑑(いほうめいかん)[国立公文書館内閣文庫所蔵、四冊、一九五・一六四]
別名は、醫方明鑑(いほうめいかん)。著者は曲直瀬正紹である。曲直瀬家の系譜を辿ると、以下のようになる。
曲直瀬道三(正盛)―玄朔(正紹)[天文十八―寛永八(一五四九―一六三一)年]―玄鑑(親純)―親昌―玄淵(親俊)[寛永十三―天和三(一六三六―一六八六)年]。
この書は、道三の跡を継いだ玄朔(正紹)の著書で、寛永十八(一六四一)年に四冊で発行されている。『常山方』と同じく、処方を集大成したもので、当時知られていた主要な病気を分類して、それに対応する治療方法や服薬方法を解説したものである。この資料は、曲直瀬玄朔の独創的な見解を披瀝した治療書と言うよりも、父の曲直瀬道三の『啓迪集』に依拠し、主として『醫林集要』、虞搏『醫學正傳』などの書籍から処方を抜粋・整理したものである。引用文献名も略語で明記されている。「林」は『醫林集要』、「傳」は『醫學正傳』を示すのであろう。
本集成では内閣文庫所蔵の寛永十八(一六四一)年発行の四冊本を使用した。この文庫以外に、この資料の版本及び写本を所蔵している国内の図書館を列記してみよう。いずれも『国書総目録』『古典籍総合目録』(岩波書店)からの引用である。
*写本 (一)内閣文庫[第三巻のみ]、(二)慶応大学、(三)慶応大学医学部富士川文庫、
(四)杏雨書屋乾々齋文庫[自筆]。
*版本(寛永五[一六二八]年発行)(一)東北大学狩野文庫、(二)研医会図書館[第一巻及び第二巻のみ、二冊]、(三)慶応大学医学部富士川文庫。

*版本(寛永十三[一六三六]年発行)(一)慶応大学医学部富士川文庫、(二)研医会図書館[第一巻から第五巻まで、五冊]。

*版本(寛永年間発行)(一)天理図書館古義堂文庫、(二)旧彰考館。

*版本(慶安三[一六五○]年発行)(一)京都大学富士川文庫[第一巻から第四巻まで、三冊]。

*版本(慶安四[一六五一]年発行)(一)京都大学富士川文庫。

*版本(延宝三[一六七五]年発行)(一)東京大学[第二巻及び第四巻のみ、二冊]。

*版本(発行年不明)(一)京都大学富士川文庫、(二)九州大学、(三)東京大学鶚軒文庫、(四)大阪府立図書館石崎文庫、(五)広島市立浅野図書館小田文庫、(六)市立刈谷図書館。

ここで、曲直瀬玄朔が活躍した江戸時代の初期の医学の内実について総括してみよう。
徳川家康が政権を握り、江戸幕府を開いた慶長八(一六○三)年から、宝永七(一七一○)年までを江戸時代前期と定義する。この時代の医学は、中国より田代三喜などによりもたらされた李朱医学の全盛時代で、薬物の起源や鑑識、薬物の原材料地の探求などを主とするものではなく、実際の臨床治療に役立てることを主眼として、薬物の製造方法や効能のメカニズムなどを探求することに重点をおいたものであった。曲直瀬玄朔は、「幅広い視点をもって『内経』を校閲し、本草を常に考究する。診切は王氏の『脉経』を主とし、処方は張仲景を宗とする。用薬は李杲(李東垣)の方法を専門とし、なお潔古(張元素)をも参照する。病気の諸症状を弁治するためには、朱震亨(朱丹溪)を師とし、なお天民(虞搏)に従う。外感は張仲景に、内傷は李杲(東垣)に、熱病は劉完素に、雜病は朱震亨(朱丹溪)に、それぞれ則って治療することを心掛けるべきである」と、説いている。ここに彼の治療方法の真髄が、要領よくまとめられている。西洋医学の伝来が確認されていないこの十七世紀にあっては、当然ながら中国医学の影響力が大で、日本の風土や民俗に即した独創的な治療方法の確立は、時間を経てからのことである。いわゆる、漢方医学の記載的段階に相当する時代であったのであろう。だが、約一千四百項目にのぼる多くの処方が記載されていることを考えると、中国の古典的な医学書から採用された処方のほかに、初代の曲直瀬道三以来、曲直瀬家によって考案あるいは改良された数々の処方が混在していると考えるのが妥当であろう。ただ、編者の力量を考えて、この研究は後学の士に委ねられるべきであると考える次第である。これら中国伝来の古典的な処方と、日本において改良あるいは考案された処方の比較研究は、中国と日本の医療文化の相互の伝播作用を解き起こす重要な鍵になるであろう。現在の薬の効果のみを論ずる平面的な研究ではなく、処方の背後に見られる何物かを読み取る立体的な研究へと開かれる道があることを確信している。歴史学、論理学、薬学、民俗学などの蓄積を活用して、今後の総体的な研究が待たれる次第である。

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