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ISBN978-4-7603-0431-8 C3321 \50000E
第10巻 日本科学技術古典籍資料/數學篇[16]
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50,000円 (税込:55,000円)
第10巻 日本科学技術古典籍資料/數學篇[16]
解 説
この巻に掲載した「關流草術」と「関流?法艸術」は、いずれも東北大學附属図書館所蔵で、手書き資料である。両書の内容について紹介を試みたい。
(一)「關流草術」【狩七ー二○四三三ー二二】
この資料は、以下の二十九篇の論攷で構成されている。内容は以下の通りである。「關流草術利足問 全」「關流差分 壹」「關流差分 弐」「關流差分 三」「關流差分 四」「關流差分 五」「關流差分 六」「關流差分 七」「關流盈?」「關流之分 全」「關流鈎股弦 甲」「關流鈎股弦 乙」「關流求積 天」「關流求積 地」「關流求積 人」「關流接術 全」「關流截術 前」「關流截術 後」「關流餘算首巻 全」「關流統術 上」「關流統術 下」「一?盈? 全」「關流理數随筆 全」「勾股變化之法 全」「両?両竒 全」「竒偶? 全」「觧見題之法」「開除? 前編」「開除? 後編」。
「廿二冊」と表記されているのは、これらの論攷の刊行以降に、合冊が行われたと推定できる。「国書総目録」によれば、同じ表題で、以下の五種類の資料が記載されている。
①「關流草術」【六冊】
②「關流草術」【三十四冊】
③「關流草術」【十四冊】
④「關流草術」【十五冊】
⑤「關流草術」【二十二冊】:本巻に掲載した資料である。
いずれも、目次内容が異なっていて、著者、編者、校訂者、解説者なども明らかにされていない。疑問を解くためにも、これらの資料の内容の比較・検討が必要である。今回は果たせなかったので、次回以降に解析を試みたい。
(二)「関流?法艸術」【林集書二九二】
第一冊の冒頭に、山路平主住(宝永元【一七○四】年ー 安永元年十二月十一日【一七七三年一月三日】)編として、総目録が記されている。全四十五章が十冊の書籍に収められていて、目次構成は次のように表記されている。一○六九種類の設問に対して、それぞれ解答を与える方式で叙述されている。
①関流?法艸術(自一至三)【六章 一、六章 二、差分 一】
②関流?法艸術(自四至六)【差分 二、差分 三、差分 四】
③関流?法艸術(自七至十一)【差分 五、求積 一、求積 二、求積 三、求積膸毛】
④関流?法艸術(自十二至十八)【定位乗数、定位係数、求積還源 一、求積還源 二、平方、求積還源 三、数量】
⑤関流?法艸術(自十九至廿四)【卸類、互換、互換膸毛、箱桝木挽、材割、運賃】
⑥関流?法艸術(自廿五至廿九)【税務、送輸、利足 前集、利足 后集、差分 六】
⑦関流?法艸術(自卅至卅三)【差分 七、之分、盈? 前集、方程 前集】
⑧関流?法艸術(自卅四至卅八)【盈? 后集、方程 中集、方程 后集、勾股 前集、勾股 后集】
⑨関流?法艸術(自卅九至四十一)【立方、容術、接術】
⑩関流?法艸術(自四十二至四十五)【截術 前集、截術 后集、交會、堆積】
なお、「国書総目録」には、同一の表題で、以下に記す四種類の「関流?法艸術」が掲載されている。
①「関流?法艸術」【四十五巻】山路主住編で、今回掲載した資料である。
②「関流?法艸術」【三十一巻】
③「関流?法艸術」【三十六巻三十六冊】
④「関流?法艸術」【巻数や冊数は統一されていない】
これらの資料群も、目次構成が明らかに異なっている。どのような過程で編纂されたかも不明である。著者や編者も明記されていないので、比較研究を実行する必要があろう。「關流草術」と同様に、次回以降に分析を行うことを試みる所存である。
この「數學篇」のシリーズも、本書で全十六冊を刊行することができました。この偉業も、長年にわたる読者諸氏による御支援の賜であり、深く感謝の意を表する次第です。次回作品以降におきましては、中國から渡来した算法が、江戸時代を経て、如何に日本の文化に取り込まれ、天文学、暦学、測量術等の発展を支えながら、日本固有の數學として確立されていったかを、検証する必要があると思われます。具体的には、日本の數學研究を担ってきた、関孝和一門の業績と、吉田光由の記した「塵劫記」刊行以降の、數學の発展の歴史を詳細に解析する必要があると思われます。特に、内容の類似したさまざまな數學資料の大局的な分類と整理・統合・解析は、現在の閉塞した研究状況を打開するために必要な作業であると判断する次第です。これらの件に関しまして、読者諸氏からの忌憚のない御意見を期待する次第です。
二○一七年十月十一日
編者識